「あいな様にはかないませんね」
扉の手前で立ち止まり、ルイスはフワリと口元を緩めた。その頬は、やや赤い。
「だって、お城でもたくさんの出会いがありますよね、メイドさんとか、外国のお姫様とかっ!」
「ええ、出会いはありますね。日々、何人かの方と接していますから」
「ですよね。もし良かったら、私、協力しますよっ」
後先考えないあいなだった。
ルイスはそれには明確な答えを示さず、普段通りの丁寧な口調で別の話をしはじめた。
「寂しいお気持ちを感じる時間は、もうすぐ終わりにできるかと思いますよ」
「え?どういうことですか?」
「近々、龍河様と一ノ瀬(いちのせ)様がこちらにいらっしゃると思われます。あ、このこと、シャル様には秘密ですよ」
「龍河と秋葉が!?」
「その時は、シャル様にプロポーズを受けた瞬間より、ある意味驚くこととなるかもしれませんね、あいな様」
「ちょっ、どういうことですか?シャルも知らないことなんですか?」
訊きたいことが多すぎる。あいなは、何から理解していいのか分からず、その場その場で口を挟むことしかできなかった。

