龍河(りゅうが)の想像通り、あいなは城での生活に退屈し、発狂する一歩手前の状態になっていた。

「マンガ読みたい。お菓子食べたい。ブルーレイ見たい。アニメ鑑賞したい。秋葉に会いたいよー。
 あーもーつまんないっ。って言っても、ここに来てまだ1日しか経ってないんだけどね……。もう、1年は経った気分だよ」

 ルイスに指示されるがまま、部屋の中でお茶を飲んだり食事をするだけの生活。何も集中できるものがないから、時間がちっとも進まない。

 シャルも仕事で忙しいらしく、壺の件以来、顔を見せにこない。本当に彼が自分の婚約者だなんて信じられないと、あいなは思った。

「はぁ……。部屋の外にも出してもらえないなんて、ツイてないなー。まあ、そうなったらそうなった時で、ちゃんと脱走するけどさ」

 せめて、城の中をぶらつかせてくれてもいいのに、まだ、その許可は出ない。

 ついてもついても、尽きないため息。

 肌触りのいいベッドに寝そべり、ハッとした。

「!秋葉と買い物行く約束してたんだった!っやばい!秋葉、心配してるよね!?連絡しなきゃ!スマホ!」

 あわてて身の回りのものを探ったが、スマートフォンはおろか、通学に使っているスクールバッグすら、部屋にはなかった。

「あ、そっか……。ここで目覚めた時には、なかったっけ……。多分、家に置いてきちゃったんだな……」