あれは、数ヵ月前。高校三年生に進級した始業式の日のことだった。

 あいなは、片想いしていた同級生の男子に告白をしたのである。もちろん、「恋人同士になって下さい」の意味を示す告白だ。

 OKをもらえるという自信があった。なぜなら、その相手とは仲が良かったし、彼と同じクラスになれたことをお互いに喜び合ったというエピソードもあるからだ(片想いの男子と同じクラスになる。思春期まっただ中の女子高生にとって、これほど心躍る出来事はない!)。

 しかし、あいなの自信とは裏腹に、告白に対する彼の返答は良いものではなかった。

『期待させてたんならホントごめん。あいなのことは友達として好きだけど、女として見れない。それに俺、他校に彼女いるから……。ホントにごめんな』

 ――そっか、そうだよね、大丈夫大丈夫!全然気にしてないからっ。こっちこそ変なこと言ってごめ~ん!明日からまた友達同士ってことでよろしくー!――そんな返事をして彼の前から立ち去るのが精一杯だった。


「私って、いつもこうやってフラれるんだよねー、何でかなー……。『友達としか見れない』って、好きな人に言われるとけっこうグサッとくるー」

 失恋確定の翌日、くよくよモードを30%ほど引きずりつつあいなは学校に行き、昨日の告白のことを一ノ瀬秋葉(いちのせ・あきは)に報告した。

 秋葉は、小・中・高と同じ学校の女子で、あいなの幼なじみでもある。長い付き合いなだけあって、秋葉とあいなは、互いにしょっちゅう自分の恋愛話をしていた。