思い付く限りの言葉で、あいなは精一杯抵抗した。

「シャルさん、でしたか?どこの国の人か知りませんが、私はあなたと結婚するつもりはありません。新手のナンパだったら他を当たってください。もし本気なら、どうか、お引き取りくださいっ!」

 お引き取りください、だなんて、大人がビジネスシーンで使うようなセリフをまさか高校生の自分が口にする日が来るなんて思わなかった、などと、どうでもいいことを考える一方、あいなは意思を強く示すべくシャルの目をじっと見つめる。

 これで逃げられる。そんなあいなの考えは甘かった。

「お前に拒否権はない。その指輪をしている以上な」

「えーっ!?指輪!?…………!まさか、これのこと!?」

 あいなは、自分の右手薬指にはめていたシルバーの指輪を見た。透明の青い石がついているおかげで、指輪はキラキラと光る。

 シャルはそれを指さし、言った。

「その指輪は、先祖代々カスティ家の妃が身に付けてきた魔法道具だ。その指輪を自身の指にはめた者はロールシャイン王国国王の妃になることを宿命とし、これを放棄することはできない。
 何をしようが、何と言われようが、お前には、その命尽きる時まで俺の伴侶として人生を共に生きてもらう」