「はっ……!」

 いつの間にか意識を失っていたあいなは目を覚まし、今、自分が置かれている状況をぼんやりした頭で一生懸命把握しようとした。

 肌触りの良いシーツが敷かれた天蓋(てんがい)付きベッド。ピカピカに磨かれた窓ガラス。高価な絨毯。

「すべすべ……。こんなベッドに寝たの、初めてだ……」

 思わずそうつぶやいてしまったのは、手のひらに触れるシーツのせい。おもむろに体を起こし顔を左右に振っても、あいなはぼんやりしたままだった。

「どこのホテル?ううん。ファンタジーゲームの宮殿に出てくるお姫様の部屋みたい。すごい……。じゃない!!」

 さっき自分の身に起きたことを思い出し、あいなはベッドの上で立ち上がった。

「まさか……。ここって、シャルの家!?」

 すでに『シャルさん』と呼ぶのをやめた。その理由は、言うまでもない。彼女は、シャルのことを完全に敵視しているのだ。

「あの怪しいイケメン!私のこと、拉致監禁するとはいい度胸だ!」

 お姫様気分は一転、あいなはみるみる怒りの形相に変わっていった。

「私としたことが、どうしてあんな奴の言いなりに……!?」

 こんな時も負けん気をフル稼働させられるのは、彼女の強みのひとつであろう。