王子、月が綺麗ですね

叔母上が切り出し、先頭に立ち歩き出した。

「サッサとしなきゃ陽が暮れちまうよ。宿屋でハーンの使いとも落ち合わなきゃいけないんだ」

その足取りはさっきまで気怠げに歩いていたとは思えないほど、しっかりしていた。

松葉杖の俺は直ぐに遅れをとり、数メートル差がついてしまった。

「葵くん」

凛音がおぼつかない様子で照れながら俺を呼び、隣に並んで歩く。

それがとても心地よかった。

市場を抜け、噴水広場前を過ぎると役所が数メートル先に見えた。

紅蓮と叔母上は役所に着くと、休む間もなく案内所に向かい、職員を質問攻めにして、情報を得た。

洸琳までの簡単な道案内イラスト、それに温泉地図と温泉案内の小冊子を手に入れた。

紅蓮は父上とハーン殿が考慮して決めた視察旅での宿屋を確認し、役所の憩い広場で、この日の行動を5人で話し合った。