「お姉さん、これ」

紅蓮が生搾りのジュースの店で、オレンジを手に取った。

威勢良く「あいよ」と答えた中年の女は、オレンジを数個鷲掴みすると、ミキサーの中に押しこんだ。

「姉さん、運動麻痺治療で温泉に行くんだが良い湯を知らないか」

中年の女は「姉さん」と呼ばれ、まんざらではないのだろう。

ニコニコしながら「そうだね~」と考え始めた。

「そっちの坊やを治療に連れて行くのかい?」

「ああ、作業中に怪我をしてね」

サラサラと言葉が出てくるものだと呆れる。

「ん!? 珍しいね、銀髪かい? 女王と同じ色じゃないか」

女は紅蓮の肩越しに、俺をマジマジと観る。

「胸に提げてるのは……勾玉だね、本物かい?」

俺はヤバいと感じ「レプリカだ」と呟いた。

「何だい、偽物かい。本物なら、洸琳の白濁の湯に浸かると龍神の加護があると聞いたことがある」