「すまぬな」

「我慢しないことといいましたよね。葵くん」

「そうですよ。あ、葵くん」

凛音が追いかけてきて隣に並んだ。

市場が近づくと、屋台から香ばしい匂いが漂ってきて、祥が匂いをしきりに嗅いでいた。

「あれだけ食べてまだ食べるつもりか?」

呆れて思わず言うと祥は「はあ?」と俺を見下ろした。

「それを言うなら、たったパン1枚に珈琲1杯に野菜サラダで足りてる方が不思議だ。しかも、パンは半切れ残していた」

「低血圧だから、朝はたくさんは入らない」

「だからそんなに華奢なんだ。凛音と変わらないくらい細い」

「あんたたち! いい加減におし」

叔母上に一喝されて、祥は急に静かになった。

市場は様々な人々でごった返し、農作物、惣菜、雑貨、骨董、古着、鮮魚など様々な物が溢れていた。

もたもた歩いていると、はぐれてしまいそうで、凛音や紅蓮に必死で歩調を合わせた。