王子、月が綺麗ですね

「無茶すぎる……」

「月が満ち、望月には龍神の気も完全に戻り、王子の体力も回復するし、後遺症もなくなるかもしれないと……だが、甘かった」

「ん!? 俺が視察の同行を命じられたのは、闘神祭終了の翌日だったけど」

「両陛下は闘神祭初日、俺たちと侍医に湯治を兼ねた視察同行を話された。察しておられたのだろう」

「察していたのに何故、王子を棄権させなかったんだ? あんな薬を使わせる前に何故、止めなかったんだ!!」

怒りに満ちた祥の叫び声が響いた。

「大きな声だな」

部屋着に着替えた王子が応接間に、姿を現し、松葉杖を置き、わたしと祥の間に座った。

祥は慌てて飛び上がり、気まずそうに俯いた。

「其方には解らぬ。両陛下を始め、代々の王族や女王騎士、王宮に従事してきた人々が築き上げ守ってきた国と誇り、お飾りの王子でも余には守っていく責任がある」