医者に言われたことながら、慣れない松葉杖を操作して歩くのは、面倒で苛立たしいだろうと思う。

王子の歩調に合わせてゆっくり歩く。

一緒に歩けるのは嬉しいのに、悲しかった。

待ち合わせた広場につくと、瑞樹さまが「難儀だね」と目を細めた。

「お待たせしてすみません」

闘技奴隷の祥は、紅蓮殿と並んで待っていた。

王子は瑞樹さま、紅蓮殿、祥を見回し、深々と頭を下げた。

祥は王子を見るなり「えっ!?」と漏らし、目を見開いた。

「湯治を兼ねて視察に行かれると伺っていたけれど、怪我をなさっていたなんて……もしかして奉納試合の前から?」

「いや、試合の後に階段を踏み外して」

王子はさらりと嘘をつかれた。

「へえ~。王子は存外、おっちょこちょいなんですね」

「まあな……」

王子は笑顔を作ったけれど、その笑顔があまりに綺麗過ぎて、無理をしているなと思った。