望月の夜、熱く火照りを増していく身体を夜風で冷まそうとベランダに出て、煌々と輝く月を部屋で見つめていた。

「凛音、起きておるか」

ベランダから凛音の部屋に問い掛けた。

俺の護衛騎士でもある凛音の部屋は、俺の部屋の隣にある。

「満月を……こんなに待ちわびたのは初めてだ」

返事を待たずに呟く。

「王子、夜風はお身体に障ります」

ガウンを纏いベランダへ出てきた凛音は、俺を観るなり目を丸くした。

身体の内から沸々とたぎってくる感覚は朔の日とも、奉納試合の日とも違っている。

「凛音、湯治を兼ねて祖国視察をして参りたい。両陛下には明日、願い出る。着いてきてくれぬか」

それは奉納試合後から毎日、考えていたことだ。

定かではない後遺症や不調に怯えていては、何も前には進まないと思った。