優しく包みこむような眼差しで仰せになった。

「承知いたしました」と答えながら、何事だろうと不安になった。

「余計なことを話すでないぞ」

王陛下と分かれたところで王子が囁き、ハッとした。

王陛下は王子のお身体の異変に気づいておられるに違いないと感じた。

わたしのすること、できることは何かを頭の中で思い巡らせる。

「凛音、何を呆けておる。手を貸せ」

松葉杖を操り階段を上るのは、思っている以上に難しいのか、王子の額には汗が滲んでいた。

どう手を貸せばいいのか、焦っていると急いで駆け寄ってきた紅蓮殿が「王子」と呼び、王子を軽々と背負った。

「すまぬな」

王子は消え入りそうな声で言う。

自分の剣術指南を務める紅蓮殿に負ぶさっていることが堪えているのか、王子はその後、部屋の前まで押し黙っていた。