「姉上、あの者たちは姉上をめとり、貴女と共に我が国を創るために闘っているのですよ」

「葵……気分が優れぬ。妾は」

「目を背けるな」

それは低く険しい一喝だった。

隣で震えておられる桔梗さまを冷たく突き放す王子の声に、わたしまでハッとし体がびくついた。

「試合に敗れた闘技奴隷は雇い主の貴族から、気絶し動けなくなるまで殴る蹴るなどの体罰を受けるのですよ。中には体罰で二度と闘えないほどの痛手を負う者もいるのです」

「──惨いことを」

「あの者たちは命懸けで闘っているのです。なのに、それを当事者である姉上が目を背けるなど……全試合を見届けなさいませ」

毅然とした声にも表情にも、女王にも勝る威厳を感じた。

「よくぞ言いました、葵。桔梗、其方は国を統べる王になる身です。これしきの闘いをも正視できなくて如何しますか」