納得のいく鍛錬もままならないまま、奉納試合を迎たことを忘れてはいないはずだ。

僅か数分間の試合で栄養剤の摂取をしなければならないほどの体力消耗は、いつまで続くのだろう、今後の王子の行く末に暗雲をかける。

全てを忘れたかった。

「望月以降のことは、その時に考えればよい。凛音、観覧席へ戻る」

王子はハーン殿から松葉杖を受け取り、腰を上げた。

ふらついた王子の身体を咄嗟に支える。

王子は「すまぬ」と呟き、松葉杖をしっかり両脇に固定し、歩き出す。

「王子、後程お薬をお持ちいたしまする。くれぐれも無理はなりませぬぞ」

王子は振り返らずに「口説い」言い救護室を出る。

使い慣れない松葉杖を操る王子を支える以外、何もできない自分がもどかしかった。

何とか観覧席まで戻る。

王子の姉君桔梗さまは「ようやく戻りましたか」と王子を見上げた。