ずらした下着と服を上げ、起き上がろうとする王子をハーン殿が「急に起き上がってはなりませぬ」と厳しく制する。

わたしはキュッと唇を結び、サッとベッドの傍らに立った。

ゆっくりと体を起こそうとする王子の背に、手を添えた。

王子が起き上がりベッドに腰掛けると、ハーン殿が「おみ足にはまだ力が入らぬはずです。痛みと痺れもございますな」と、松葉杖を差し出す。

「痛みや痺れが治まっても、無理はなりませぬぞ」

「大仰な」

「王子の体力はまだ完全に回復してはおらぬのですよ。秘薬で強制的に回復させた代償を侮られぬように」

代償という言葉の響きに、言葉を失う。

「望月に龍神の力が満ち、お身体が回復なさったとしても、秘薬がお身体に与えたものが、どのような形で現れるか判らぬのですから」

ハーン殿に言われるまでもなく、王子の胸中にその不安は常にあるに違いなかった。