王子、月が綺麗ですね

試合を終えた後も身体の火照りは収まることなく、更に熱くなっていくのを感じた。

通路を歩き階段を登るたび、疲労感が増していく。

足を前に出すのさえ、おっくうなほど倦怠感が強くなり、視界がぼやけていった。

壁伝いの手摺りに手を掛け、1歩1歩確かめながら歩く。

体の節々が軋み、木刀で打たれたような痛みが連続して走る。

息が切れ呼吸が乱れ、足に力が入らない。

動悸がし、眩暈で体がふらつく。

自分の身体なのに、思うように動かせない。

こんな所を誰かに見られでもしたらと思った時、聞き慣れた声がした。

「王子!!」

サッと手を取り、俺の腕を肩に回し、体を支えて立ち上がった。

「……凛音」

「王子、お探しましたよ。祥とご一緒に闘技場を出られた所までは見届けたんですが、観覧客に声を掛けられて案内を……急いで戻ってきたら、王子を見失って」