王子、月が綺麗ですね

「勝負あり。勝者、葵王子」

審判の旗が上がり、凛とした低い声が結果を告げた。

「祥、楽しませてもらった。礼を言う」

俺はスッと手を差し出し、祥に握手を求めた。

「やはり、お強いですね。鍛錬の鬼との噂は本当だった。ありがとうございました」

祥は俺の手を両手で包み込んで、爽やかに笑った。

祥の腕を掴み祥の腕諸共、両手を上げ観客の声援に応える。

「王子!?」

祥の戸惑った顔が、俺と観客席を交互に見た。

「奉納試合を披露した英雄だ。しっかり観客にアピールするがよい」

審判が「モタモタせずにサッサと退場しろ」と言いたげに口を尖らせ、俺たちを観ていた。

祥と肩を並べて闘技場を退場し、入り口で分かれると、俺はその足で救護室に向かった。

観覧席につながる通路や階段を幾つか抜け、温かみのある木戸を開け、更に通路を進む。