「情けないな、たったあれしきで」

王子は吐息混じりに呟いた。

紅蓮殿は王子を背負って歩きだした。

騎士たちが鍛錬しているのを横目に、王宮広場へ抜け騎士詰め所前の廊下を過ぎた所に差し掛かり、紅蓮殿は穏やかに口を開いた。

「王子は幽門の徒について何処までご存知ですか?」

「幽門の徒は法で裁けぬ犯罪者を秘密裏に暗殺する組織と聞いておる。葬る犯罪者の中には、日々鍛錬しておる剣豪でも、歯が立たぬ屈強なSPを警護に付けておる者もいると……」

王子は僅かな情報を手繰り寄せながら、ポツリポツリと話し出した。

「使用を禁じられた秘薬を数種類所持しておると──例えば速攻作用もあり運動機能を高める薬や、催眠作用のある薬や睡眠薬、相手の運動機能を下げる薬など、いずれも無味無臭で証拠の残らぬ劇薬だと」

「ご自分が使用なさった秘薬については?」