「病み上がりに、いきなり2時間も鍛錬などなさるからですよ」

王子はわたしと紅蓮殿を振り払い立ち上がろうとし、三節棍を握った手に力をこめた。

「王子、今日はゆっくりお体を休められませ。倒れられては敵いませぬ」

指揮官のクレイグ殿が眉間に皺を寄せた険しい表情で、王子を見据えた。

「丸2日も気を失っておられたのだからな」

誰かがボソリと呟いた。

「疲れてなどおらぬ」

王子は毅然として言い返したものの、王子の両脚は痙攣したまま、立ち上がることさえできない。

「王子、お身体は正直ですな」

クレイグ殿は冷ややかに言い放った。

紅蓮殿は王子を無言で抱きかかえた。

萎えて動かない脚を一夜にして動かすほど強力な、幽門の徒の秘薬「烈身」は、体力消耗が激しいとは聞いていた。

けれど、僅か2時間で立ち上がる力も失せるほどとは思わなかった。