最後まで集中できないまま鍛錬を終え、訓練所を出ようとすると、紅蓮殿が「王子は奉納試合に出られるのか」と訊ねた。

「陛下の命だからと」

紅蓮殿の顔を見ずに答える。

「ったく、無茶をなさる。凛音、王子の警護しっかりな」

紅蓮殿はわたしの肩をポンと力強く叩いた。

夕方。

自室に戻ろうとして王子の様子が気になり、王子の間の前まで来て、扉に手をかけた。

王子から「今日はゆっくりしてよい」と言われ退室したのを思い出し、入室を躊躇ったが、扉の中からドサッと鈍い音がした。

「えっ!?」と思い扉を勢いよく開け、目にしたのは王子が床に座り込んだ姿だった。

「王子、如何なさいました?」

咄嗟に叫びながら駆け寄ると「どけ」と、突き飛ばされた。

王子は深紅の三節棍を握りしめ、杖代わりにし膝を立てた。