「はい」

いかにも渋々答えたと言いたげな顔だった。

「余計なことを話すでないぞ」

「何故、そのような無理をなさるのですか?」

「先ほど話したであろう」

「どのような後遺症が現れるかわからぬのですよ」

「覚悟しておる」

「一生、後遺症と付き合わねばならないかもしれぬのですよ」

「覚悟しておると申しておろう!!」

「わかっておられません。何もわかっておられませんよ」

凛音の瞳に滲んだ涙が、頬に溢れた。

胸がキュッと締めつけられた。

ひどく悪いことをしている気がしてくる。

「泣き虫だな、凛音は」

ベッドの傍らに立ち尽くし、涙を拭う凛音から目を逸らし俯く。

「王子は恐ろしくはないのですか」

凛音は身を屈め、俺の顔を覗きこんだ。

「自分のせいで国が、皇族が見下げられるほうが……俺は恐い」

涙の伝う凛音の頬に手を伸ばし、涙を拭いながら、俺は静かに答えた。