王子、月が綺麗ですね

「本来、龍神はその原形の姿を実体化するのは稀にございまする。副騎士長紅蓮殿や凛音殿の話では、龍の形をした光が龍の姿を実体化させ、王子に話しかけたと」

「ああ、確かに」

「おそらく、女王陛下が一大事に危険を感じ龍神の力をご利用になろうとされたのでしょうな」

侍医が淡々と推理を始め、俺は食い入るように聞いた。

「じゃが一昨日は朔月。女の身には咄嗟に、龍神の強力な気を充分に溜め込み、放出することができないと……」

「龍神が、器が足らぬと判断したと申すのか」

「朔月では宿主の命が危うくなると、龍神の身も崩壊しかねませぬ。ですから、女王陛下は勾玉を王子に授け龍神の力を託したのでございましょうな」

「龍神を守るために」

「あくまでも推測にすぎませぬがな。望月には王子のお体も完全に回復なさいましょう。おみ足の自由も」