王子、月が綺麗ですね

「痛みはございますかな?」

足の付け根から爪先までを触診し訊ねる。

「特に気になる痛みはないが、力が入らぬ」

侍医はハタと考える仕草をし、徐に口を開いた。

「一昨日は朔月にございましたな」

「ああ……月のない晩だった」

いきなり何を言い出すのか、俺は不穏な面持ちで答えた。

「運が悪うございましたな。望月なれば直ぐさま体力が回復なさり、お体も癒されたやもしれませぬな」

「龍神の力と月齢が関係しておると申すのか」

俺は不機嫌に訊ねた。

「さようで。月の満ち欠けは生命に強く影響しておりまする」

「潮の満ち干だけではないのか。満ち潮の日に生命は誕生するのであろう?」

「生命の神秘には様々な自然の力が働いておりまする。潮の満ち干も月齢も、その内の1つにございます」

「龍神の力との関係は」