王子、月が綺麗ですね

ハッとした。

ーーそうだ、王子はそういう方だ。自分のことよりも周りのことを気遣われる方だ

「凛音。自分のするべきことはした上で、そうでないと王子が」

「そうですよね、心配させてしまいますよね。紅蓮殿。わたし……」

「行ってきなさい」

わたしは紅蓮殿に1礼して、荷物を手に取った。

女給が前を歩き、部屋へ案内する。

わたしたちの部屋は王子たち男組みの隣の部屋だ。

「今晩は新月の前ですので、月明かりも暗いです。部屋を出る際は、こちらを」

仲居はそう言って、ランプを置いていった。

ーーあの夜から、未だ1ヶ月しか経っていないんだ。あの夜から……。秘薬に副作用があることを知っていたのに

ただ後悔が押し寄せて、体が震えた。