紅蓮殿が王子を両腕に抱き抱えながら、早口で言った。

「はい」

出迎えた女将に事情を話すと、女将は自ら寝床を整えた。

女将が寝床を整えていると、仲居が氷のうや氷枕などを抱え入ってきて、女将の指示に従った。

「医者をお呼びいたしましょうか」

女将が寝床を整え終えて訊ねたけれど、紅蓮殿が処方された気付け薬などがあるからと断った。

「凛音、王子は俺が看ておくから飯を食べて湯に浸かっておいで」

紅蓮殿に言われたけれど王子の様子が気になって、ゆっくりなどできそうになかった。

「紅蓮殿。わたしが看ていますから、紅蓮殿が先に」

「凛音。明日は新月だし、ハーン殿がおっしゃっていたように今日から明後日までの3日間は王子の体調は一進一退だ」

「心配なんです。心配だから側にいたいんです」

「気持ちは解らないわけではないけれど、王子は自分の心配で凛音が何も手につかない状態をどう思うわれるだろうか」