「無茶はするでないぞ」

王子は言いながら式紙を数枚、取り出した。

わたしの手を取り、掌の上で式紙に呪文をかけた。

「危ういと感じたら、念じよ。良いな」

「はい。承知いたしました。では」

王子の心配そう目と見守る視線が、不安を勇気に変えていく。

わたしはできる、わたしはやれる-ーわたしは追っ手の居場所を探りながら、路地を駆けた。

追っ手は思惑通り、わたしを追ってきていた。

幽門の徒で培った勘と技、自分の恥ずべき境遇
が今になって自分の身を守り、尚且つ王子を守れることに感謝した。

わたしは追っ手の死角から尾行者の動向を探りつつ、王子たちから完全に引き離したのを確認し、忍ばせていた吹矢を取り出した。

矢の切っ先には毒が塗ってある。

追っ手の首筋を狙い、吹矢を放った。

矢は狙い通り首筋に命中し、呻き声を上げ動かなくなった。