凛音はそっと遠慮がちに、ゆっくりと戸を開けて、瞳を游がせた。

「眠れないんですか」

窓辺に俺の姿を見つけると、心配そうな声で言いながら近づいてきた。

「人のことを言えぬだろう。其方(そち)も眠れず余の元へ来たのであろう?」

俺はすげなく言いながら、内心は訪ねて来てくれたことが嬉しかった。

「月明かりを見ていたら寂しくなって……」

「明かりがあるぶん、何もないよりましだ」

「それはそうですけど」

「寒くないか? もすこし此方へ」

寝床から出た時、毛布を纏ってきた。

毛布を広げ、凛音の肩を引き寄せる。

「ーー王子」

凛音からシャンプーの甘い匂いが微かに香る。

ピタリと触れた肌から、凛音の体温が伝わってくる。

「凛音……こうしているだけなのに暖かいものだな」

凛音の吐息が聞こえる。

凛音の鼓動が早まっていくのがわかる。