有事には身分の証にもなる紋章が細工されている。

南都を納める風早氏を訪ね、便宜を図ってもらえば俺たちの行脚も楽になるだろう。

だが、確かな証拠はないものの南天を守護するという朱雀のあの状況は、こちらの出方を観ているとしか、思えない。

手の込んだこと、回りくどいことをする男だ。

そして油断ならない男だ。

そんな男が姉上の夫になり、時期国王の右腕になるのだ。

姉上には、あの男を制御しきれない。

国の(まつりごと)を全て、あの男の良いように牛耳られるに違いない。

それは断じて阻止しなければならない。

あの風早の思い通りにはさせない。

思いは募るばかりだ。

ハーン殿は力を使うなと言われたが、俺にはそれに従えない理由には、じゅうぶんだ。

使役(しえき)した式神(しき)の情報をただ待っているだけでは、風早の本性は暴けないだろう。