南都に着いて間もなく、広場で演奏した様子や宿での演奏の様子が口コミで広まっているようだ。

夕刻、梢琳で俺たちを待っていたのはハーン殿だった。

宿に着いた俺たちを待ち構え、手続きを急かし、仲居が部屋まで案内するなり血相を変えた。

「そなた、何をなされた!?」

俺を見上げた顔が驚愕の表情に近かった。

「朱雀の呪詛を祓っただけだが」

「そなたはまだ、ご自分のお身体がどのような状態なのか、理解しておられぬようじゃな。聖獣の呪詛を祓うなど……」

「大した体力は消耗しなかったが」

「ご自分の気が整うておりませぬのに、聖獣にかけられた呪詛を祓う大技を使うなど──何か変わったことはございませなんだか?」

「晩に熱は出たが、予測の範疇だ。八咫烏が気づかなかった呪詛を祓ったのだ。そのくらい当然であろう」