王子、月が綺麗ですね

翌朝。

宿を発つ準備をしていると、八咫烏からの報告があった。

王子は報告を聞き、ホッと息をついた。

「どうなんだい?」

瑞樹さまがせっついた様子で王子を問い詰めた。

「母上が八咫鏡で明王に気を送られ、呪詛と穢れは祓われたと。他の四神に異常はなかったようです。今後は警護を強固にするとのことです」

「そうかい。ひと安心だね」

「八咫烏を遣わせたのは正解でした。朱雀のあの様子だとこれから仕掛ける算段だったのかも知れませんね」

「物騒だね。で、あんた熱は引いたのかい?」

「なんとか」

王子は穏やかに笑ってこたえたけれど、まだ少し顔色が優れなかった。

宿を発つ前に、王子はお世話になったお礼にと演奏を申し出て、昨晩の高熱が嘘だったように見事な演奏を披露した。