「王子!!」

朗々と呪を唱える凛とした声が響く。

王子の声は辛そうでも苦しそうでもない。

「王子、手が……」

焦って叫ぶわたしたちの声さえも王子には届いていないのか、王子は朱雀の枷を取り外すことだけに気を集中させ、呪を唱え続けた。

十数分、枷と葛藤し朱雀の両足の枷がゴトリと鈍い音を立て外れた時、王子の頬に涙が一筋伝った。

朱雀の脚をそっと優しく擦り、王子は朱雀に話しかける。

「痛かっただろ。酷いことをする奴がいるな」

辺りを焼け焦げた臭いが充満し、朱雀と王子の周りに炎が立っているのに、王子は涼しい顔で朱雀を全身で抱きしめた。

刹那、朱雀の身体が一瞬にして業火に包まれ、渦を巻く赤い炎が高々と社の天井まで上がった。

「あっ……」

わたしたちが思わず叫んだ次の瞬間、朱雀の姿は跡形もなかった。