「あんたら、麓から来たのかい。山賊には会わなかったかい?」

俺の隣でお茶を啜っていた男が訊ねた。

「楽しませてもらったよ。ねえ、葵くん」

紅蓮は笑って俺に同意を求めた。

「この人数だから良かったものの、あんな得物は初めて見た」

「あの怪我では暫く出て来ねえよ、なあ」

葛切りを啜りながら言うには説得力はなかったが、男は目を輝かせた。

「兄さんたち、ただ者ではないな。この先、村まで同行させてもらっていいかい」

「病人と女連れだよ。急ぎでないなら構やしないよ」

叔母上が言うと「どうしなすった、兄さん」と、紅蓮が俺の足をテーピングするのを興味深く観察していた。

「朱雀の社を詣って、灰をまぶし朱雀の羽根で足を撫でるとようございます。朱雀は身を焼いて復活するとか」

お給仕が楚々とした居住まいで、お茶を注いだ。