「紅蓮。明日は梢琳の宿だが、朱雀の社へ寄る暇はあるか」

出発の支度を整え訊ねた。

「八咫烏の報告を待たずに?」

「アムリタの祠は梢琳のさらに先だが、朱雀の社の調査は足を運んだ方が早かろう」

祥が「へぇ~」と間の抜けた声を上げた。

「そうだな~。朱雀は確かに」

「明王の祠や四神の社の場所まで知っているのか」

「まあな、一応神職だからな」

「祭事が多いからね。姉上たちだけではこなせないのさ。この子みたいな半人前でも、ある程度の知識があれば役には立つからね」

「叔母上、ひどいですね。叔母上よりはマシだと思いますよ」

「あーそうだよ。実際、あんたは大したもんだよ。陽の龍神があんたを選ぶほどだからね」

俺と叔母上のやり取りを冷めた表情で見ていた紅蓮は「朱雀の社に寄るなら急ぎませんと」と、荷物を抱えた。