王子のお側で初めて人の優しさや暖かさを知った。

学ぶことの大切さや意味、誰かのために何かをする、何かをできる嬉しさを知った。

王子は一緒に勉強し始めたとき、ろくに字も書けなかったわたしに「こんなことも知らないのか」とは言わなかった。

わたしは王子の口から「何にも知らないな」と言われたことがない。

わからない、知らないと俯くわたしに「知らないことは恥ではない。知らないことを知らないままでいることが恥だ」と慰めてくれた。

王子はいつも家庭教師よりも丁寧に教えてくれた。

市中に出かけた時は、いつもつかず離れず側にいて、周囲に気を配り、段差や階段ではサッと手を引いてくれる。

風貌のよくない人やガラの悪い人に声をかけられた時には、盾になり、守ってくれる。

どちらが護衛なのかを疑うほど、王子は細やかに気遣ってくれる。