「気に病むことはないさ。あの子はあんたに王族の事情まで背負ってほしくないんだろう。あんたはさ、あの子の側にいる。それだけで、あの子の力になっているんだから」

瑞樹さまは女王陛下によく似た眼差しで、わたしを諭す。

「『俺の側にいて笑顔でいろ』なんてキザなこと言ってさ。素直じゃないよね。はっきり、言えないのかね~」

豪快に笑って「早くお休み」と付け加えられた。

素直にはっきり言わないところが王子らしくていいと、わたしは思っている。

はっきり言われたら、どうお答えしていいかわからない。

わたしは王都をさ迷っているところを王陛下に拾われた。

親兄弟の行方さえ知らない。

時々、思い出すのは苦悶に顔を歪めてのた打ち回る人々の姿と、凍りついた表情をした人々の姿だ。

王陛下に拾われなければ、今頃どこで何をしているかさえ想像できない。