「まだ寝ないのかい」

瑞樹さまに問われ「日記をつけておりました」と答えた。

王子のお側につき始めて以来、ずっと欠かさず日記をつけている。

簡単な覚え書き程度の日記だったが朔の出来事以降は、その日の出来事や様子をできるだけ詳しく書くようにしている。

「マメだね。あの子の側にいて、毎日書くほどのことがあるのかい? 大して変わったことはないだろう」

「旅先では何が起こるかわかりませんし、王子のお身体も心配ですから」

「面倒なモノを背負いこんじまったからね。あんなことしなけりゃ、厄介なことにはならなかったのに」

瑞樹さまは大きく息を吐き出し、髪を掻き上げた。

「でも、王子があの時」

「わかっている、わかっているさ。だから尚更、不憫なんだ。何とかしてやりたいと思っても何にもできゃしない」