「凛音は家族同然だ。どう思っておるかなど」

頬と身体の火照りが風呂のせいなのか、祥の質問のせいなのか、わからない。

ただ、このまま浸かっていたら、のぼせそうだと思い、空を見上げた。

雲間から、月が顔を出している。

───月が欠けていく

日1日、月が形を変え細くなり、朔には姿が消える、そう思うと急に不安が押し寄せた。

「紅蓮、そろそろ」

「のぼせましたか」

祥の舌打ちが微かに聞こえた。

──凛音の居らぬことなど考えたことがない

祥に「其方はまだ上がらぬのか」と訊ね、紅蓮の腕に抱かれ湯船を出ながら、言葉を飲み込んだ。

月が雲間に隠れ薄暗くなっていく。

闇が恐かった。

自分の行く末を暗示されているようで、ただ無性に闇が恐かった。