「そんなことないです。今日だって王子がいらしたから市場の方々も色々情報を下さったし、お役所でも」

凛音がムキになり、身を乗り出して反論する様子が嬉しい反面、自由にならない身体を思い知らされ、虚しかった。

「お婆さんと女の子もあんなに喜んでいたではありませんか」

「何か──変わったことがおありでしたかな」

「いや……」

少女の痣が消えた、目の当たりにしても未だに信じられなかった。

「凛音、定かでないことを話すでない。妙な噂を立てられては敵わぬ」

ハーン殿の使いは此方の様子を窺い、しきりに首を傾げていた。

「おみ足の不具合と処方の件、ハーン殿にしかと伝えおき致します。明後日、梢琳の宿にてお薬をお受け取りくだされ。くれぐれもご無理をなさいませぬよう」

膏薬と痛み止めを受け取り、荷をといていると、女将が挨拶に来た。