宿についた時には、すっかり日も暮れていた。

ハーン殿の使いは俺たちを待ちくたびれたと言わんばかりに、挨拶もそこそこ質問攻めにした。

今日1日の歩行距離と俺の様子を凛音たちに訊ねた後、俺と凛音を紅蓮たちから引き離した。

彼は俺を邪険に、部屋のベッドに押し倒したかと思うと入念に触診した。

「ずいぶん凝っていらっしゃいますね」

「慣れぬ松葉杖で歩いておるからな。30分も歩かぬうちに痛みだし、力が抜け萎えて痺れ動きが鈍くなる」

「そんなに──」

凛音の目が動揺し、漏れた声が引きつっていた。

「予測以上に苦労なさっているようですね。お薬は効きませぬか」

「頂いておるのは膏薬と痛み止めだけであろう。何とかならぬのか」

「筋力が弱くなっておるのでしょうな」

「長旅だ。これでは先が思いやられる。旅のお荷物にしかならぬ」