「葵くん、足が心配だから」

「よい、自分で歩ける」

王子は気丈に言い放った。

「遠慮おしでないよ。あんたの足は龍神絡みの上に薬の後遺症なんだ。甘く見ちゃいけないね」

「まあまあ、瑞樹さん。そう頭ごなしでは可哀想ですよ。葵くん、陽が落ちるまでに宿場へ入りたくてね。少し急ぐから、無茶をさせたくないんだ。いいね」

王子はバツが悪そうに「わかった」と呟くと、わたしを見上げ、松葉杖を差し出した。

「フ~」と息を吐き出し、紅蓮殿の肩にしっかり捕まる。

「まるで赤子だな」

「足腰が立たないんだから仕方ないだろ。観念おし」

「叔母上は容赦ないですね」

「あんたはこれくらい言わなきゃ効かないだろ」

紅蓮殿は肩を震わせ笑いを堪え、王子はシュンとしていた。

押し黙ったまま、ただ紅蓮殿に背負われた王子の後ろ姿は肩が小さく震えていた。

笑っているのではないと思った。