「痛っ……もっと優しく」

「じっとしていてください」

紅蓮殿は副騎士長だけあって、急な痙攣やこむら返り、捻挫などの処置にも的確に対応なさる。

「祥、凛音。体を固定しろ」

「祥くん、腰を押さえて」

わたしたちが王子を押さえつけていると、先を歩いていた瑞樹さまが、後返してきた。

「何なんだい? 脱臼でもしてるのかい」

瑞樹さまの一声に、その場が凍りついた。

紅蓮殿は王子の足首を持ち、1度勢いよく真っ直ぐに伸ばすと、ギュッと膝に向かって力強く押しこんだ。

耳障りの悪い鈍い音と王子の唸る声が重なり、思わず顔を背けた。

一瞬がひどく長く感じられた。

紅蓮殿は王子の足を曲げたり伸ばしたりし「よし、お終い」と自信たっぷりに笑った。

「祥、荷物を持って。凛音は松葉杖」

紅蓮殿は言い終えると、王子に背を向け、片足を立てて座った。