「凛音、不思議だな。国の中に、こんなにも青々した畑も田園もあるのに、何もないひび割れた大地もある」

「お、あ葵くん」

「江藍、あの大地も再びこんな風景になるだろうか……いや、成さねばならぬのだな」

王子は立ち止まり、淡々と語った。

役所を出て、既に数時間歩き通しだった。

汗の滲んだ王子の額をそっと拭き、再び歩き出すと、乾いた音と王子の焦った声が響いた。

何事かと後ろを振り返ると、祥が王子の体を支えていた。

「何やってるんだ!」

「あ足が吊った」

「マジかよ。紅蓮さん、ちょっと」

祥は数歩先を歩く紅蓮殿に向かって、声を張り上げた。

紅蓮殿は慌てる様子もなく、王子をその場に座らせ、王子の足を付け根から足先まで指を押しつけた。

「……少し痛いですよ、我慢してください」と言うと、王子の足首を持ちあげた。