Be Girl-翼のゆくえ-

ナナミは不思議な感覚だった。

これまで、男はもちろん、友達や親友であるハルカにも詳しく話をした事の無い自分の過去を、今日初めて会うカズオにほとんどを話してしまった。

もしかすると、もう2度と会うことは無いと思っていたからかもしれない。

これまでも話を聞いてくれそうな大人は沢山いた。

親身になって何でも相談に乗ると言いいながら、そのセリフすらもセックスの一貫でしかない……

そんな大人ばかりだった。

だから、肝心な部分は一度も話した事なんて無い。

気持ちをさらけ出してしまえば、涙が流れる事を知っていたから……

ナナミの頬に熱いものが滑っていく。

処女喪失以来、ただの一度も流れた事の無かった涙が、今こうして流れている。

もう涙は二度と流してはいけないものだと思っていた。

自分の涙には何の意味も無いし、流せば自分が惨めになるだけだと思っていた。

それでも、涙は溢れて、声を出して泣いてしまう。

自分が、どれだけ多くの悩みや辛さを覆い隠して生きてきたのか。

その時初めて気がついた。