Be Girl-翼のゆくえ-

「その代わり…おじさんにその体を見せてもらうよ」

男は不気味に笑い、ナナミの肩を抱いて店の外に移動し始めた。

ナナミはこの時、久しぶりに感情を露わにした。

自分の身が危ない。
このままではこの男にヤられてしまう。

「イヤです!やめてください!」

ナナミは涙を浮かべながら、大声で叫んだ。

男は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに不気味な笑顔に戻ると、カウンターの向こうにいる母親に言った。

「話が違うんじゃないの?」

母親は「すいません」と頭を何度も下げて、

「ナナミ!その人の言う通りにしなさい」

と言って、またその男に頭を下げた。



真っ白になった頭でも理解できた。

『私は…母親に売られた…』



向かいのラブホテルの一室で、ナナミは名前も住んでいる所も知らない男に、処女を奪われた。

呆然と天井を見つめているだけのナナミに対し、男は

「ごちそうさま」

と手を合わせ、ただ一言だけ言って部屋を出て行った。