けれど昨日10冊も本を貸したばかり。
ケンジのペースを考えれば1日で読みきれるとは思えなかった。
玄関の前、ポケットに手を入れたまま、寒そうに震えているケンジ。
固まっている顔を無理に緩めて笑顔を作ろうとしているケンジを見て、リンは思わず笑ってしまった。
「何笑ってるんだよ」
少し怒ったような声。
でも、優しい表情を崩さずケンジは言った。
「どうぞ」
リンがそう言ってケンジを家に通そうと背中を向けた瞬間だった。
外とほとんど変わらないくらい寒い玄関で、リンの背中にずっしりと暖かいものが覆い被さる。
じんわりと伝わるその暖かさ。
分厚いコートの上からでも伝わる心臓の鼓動。
リンは自分のお腹のあたりにある冷え切ったケンジの手を、小さな手で覆った。
まるで、夢でも見ているような気分で……
ケンジのペースを考えれば1日で読みきれるとは思えなかった。
玄関の前、ポケットに手を入れたまま、寒そうに震えているケンジ。
固まっている顔を無理に緩めて笑顔を作ろうとしているケンジを見て、リンは思わず笑ってしまった。
「何笑ってるんだよ」
少し怒ったような声。
でも、優しい表情を崩さずケンジは言った。
「どうぞ」
リンがそう言ってケンジを家に通そうと背中を向けた瞬間だった。
外とほとんど変わらないくらい寒い玄関で、リンの背中にずっしりと暖かいものが覆い被さる。
じんわりと伝わるその暖かさ。
分厚いコートの上からでも伝わる心臓の鼓動。
リンは自分のお腹のあたりにある冷え切ったケンジの手を、小さな手で覆った。
まるで、夢でも見ているような気分で……
