Be Girl－翼のゆくえ－

「待てコラー！！！」


この部屋には似つかわしくない声が聞こえる。
オマケに、ドタドタと騒がしい音。
その声と音の方に目を向けると、同じクラスの男子数人がふざけあっていた。

リンは少しうんざりしたが、その男子生徒の輪の中にケンジを見つけると頭が真っ白になった。
彼はポケットに手を突っ込んだまま、突き抜けるように輝く笑顔で立っていた。

「あれ？アイツってウチのクラスの…誰だっけ？」

その中の１人が、リンの存在に気付く。
リンは硬直したまま漫画を見ていたが、何も頭の中には入ってこない。

『お願い…放っておいて…』

リンは心の中で叫んだ。
こういう姿をケンジには見られたくない。
ここで漫画を読んでいる理由の中にはそれもあった。

「ねぇ、何読んでんの？」

リンの心の叫び聞き入れられなかった……
ニヤニヤしながら、１人の男子生徒が山積みにしてある漫画の一冊を手にとり、パラパラと読み始めた。