Be Girl-翼のゆくえ-

「ねぇ。一発殴っていいよ」

私はそのリンの言葉に戸惑った。
けれどリンの表情は真剣そのもので、私は完全に圧倒されていた。

「ごめん。私からのお願い。…ケジメだから」

それでも私はリンを殴ることなんてできない。
目を瞑り顔を伏せ、腕を振り上げようとしたが、その腕は鉛のように重い。
けれどリンはそれを望んでいる……

そして私は、重くて上手に扱うことのできない腕を、何か大事なモノをなでるようにリンの顔に当てた。
音も無く、ただ私の掌にはリンの柔かい肌の感触だけが残った。

リンは呆れたように、でもどこか柔かい笑みを浮かべ、

「…昔の私にそっくりだね。きっと私もあの頃ならできなかった…」

と、少し何かを懐かしむような目をして言った。

そして、重い口を開くように、昔の事を語り始めるのだった。