Be Girl－翼のゆくえ－

今にも倒れそうなリンが背中にいる。
『私は1人……じゃない』

全身に広がる人の温かさを感じながら、ふとそんな事を思った。

タバコと薄くなった香水のニオイ。
そして私の大切な存在になるはずのその人を身に纏って、私はしっかりと前を見ながら駅の改札
に向かった。




電車の中。
リンを座席に座らせて、ようやく『さて、どうしよう』と思った。

もちろん、リンの家を私は知らない。
それにこんな状態で家に連れて帰るのはマズイだろう。

完全に夢の中にいるリンは、時折顔をしかめながらも、気の抜けた優しい表情をしていた。

『仕方ないなぁ…』

そんなリンの表情を見つめていると、自然に笑みがこぼれてくる。
その笑みは本当に自然で、心の中が温かくなっていくのがわかった。

始発駅から５つ先の駅を降りて５分も歩いたところに、私の家はある。
1人でぼんやりと乗る電車は、短い区間でも妙に長く感じられたが、今日はあっという間だった。