「お父様たちは私に甘いから。
だから……彼は彼の家に帰れなくなったの。
私との婚約を断った、ただそれだけで」
私の手は彼女の頭に自然と伸びていた。
涙はピタリと止まり、キョトンとしながら私を見る。
けれど、それは一瞬でいつものように表情をキツくしながら、私の手を払った。
「貴方に慰めてもらいに来たんじゃないのよ!
左之助様を連れ帰りに来たの!」
頑なにそう言い放つ彼女の手を取って、立ち上がった。
驚く彼女に何も言わずに、引っ張り歩く。
「ちょっと!
離しなさい!!」
「うるさい。
黙ってついてきなよ」
チラリと彼女の方を向いてそう言うと、また前を向く。
それから目的地に着くまで、彼女は何も言わなかった。
着いた先は道場だった。
中からは木刀を叩き合う音が聞こえる。
気づかれないようにそっと道場の扉を開く。

