左之の家は王家に近い位を貰っていた。
だから2人は出会った。
親の仕事で、左之は彼女の宮殿に来ていた。
そこにいる間、彼女の世話は彼に任されていたらしい。
「初めは私も警戒していたわ。
でもすぐに左之助様のことを好きになった」
家同士の交流は彼女が大人になるまで続いたそうだ。
彼女の両親も左之のことをたいそう気に入っていた。
「左之助様と婚約の話が出たわ。
…私がお父様にそう願ったから。
でも、左之助様は『まだ身を固める気はない』の一点張りだった。
だから私は直接彼に気持ちを伝えたけれど……」
瞼を伏せ、溜め息をこぼした。
『菊さんのことは妹にしか思えない』と、左之がはっきりと言ったらしい。
「だから貴方が許せなかったの。
私と同じくらいの歳なのに、貴方は左之助様の大切な存在になっている。
私はずっと一緒にいたのに、どうして……」
堪えていた涙が彼女の感情とともに溢れ出す。
この人は左之のことを心から好きだっただけ。
好きが大きすぎただけ。

